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第5回 うおのめ文学賞エントリー作品 [短歌]

『逃げ水』

                       作者:椎名時慈

狂おしい夏の光が受話器から射し込んでくる 声きらめいて

心配をグラスの中でかき混ぜて溶けてしまえば未来のことなど

ロマンス」と「ハッピー」の香り混ざり合う そんな恋ではないのだけれど

君の街目指して走るこの線路 僕の中から生えてる触手

部屋の中誰かがイヤイヤするように扇風機の首僕らを見張る

暗闇が太陽を食うアフリカの夕暮れマサイは裸で直立

最高の人が居ります 最低の私の腕に抱かれています

間男はまぬけな響きが気まずくて してるアホウもされるアホウも

未来など信じる程に若くない明日は終わりに今日より近い

何年も待って出会った運命の人は10日で連絡取れず


フリンター生活 [短歌]

つながれて忘れ去られた風鈴がふりりんと鳴る嵐に目覚めて

淑女にも肉体はある他人(ひと)の妻 挨拶交わし揺れるくちびる

この胸に頬寄せる君意識して中年男腕立てをする

話にもならんと言われる話とは恋を選んだそれだけのこと

この肩にもたれて眠れあと少し私の駅はもう過ぎたけど

捕虫網ふりかざすような観覧車小さなカゴで抱き合うふたり

深夜便 まぎれて帰る我が家へはケーキのおみやげ嘘の宅配

残業と嘘つき戻る食卓に妻の笑顔とハツの串刺し

唇をなぞった指で真夜中にひとりにきびの軟膏を塗る

オスとしてまだ生きている敵でない愛する者を刺し貫いて

空高くいらないものを持ち上げて 煙突暗いため息をつく

薄皮を一枚はさんで君の中混じり合ってはならない生命(いのち)

あこがれた体の中で命はぜ引っ張り出せば袋入りゴミ

わき腹を刺されたことはないけれどそんな感じだ君に泣かれて

感動の純愛ドラマ完結し天気予報は大雨告げる

セックスハウツー本を手に取ったひとがきれいで何か悔しい

一部分アタシのなかに入っただけで支配したとは思わないでね

自分より重そうな影引きずって 捨てられないし逃げられないし

嘘に嘘重ねてつくるミルフィーユ甘くてもろいひと口の夢

言い訳の賞味期限が近づいて楽しい時間が腐ってゆきます

カゴのふた開けても逃げない鳥なんて鳥じゃないんだ君は正しい

サヨナラも三度重ねて元気出す それではサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!


(おまけ)さくらばな散れ舞え曇れ人目避け恋という道歩きたいから

*同人誌「No title」桜の号より  一部改変




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